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避けて通れない人事問題
 企業が数人でやっている規模でないかぎり、人事問題はさけて通れません。企業を伸ばすも、逆に潰してしまうのも人事部の考え方しだいです。しかし現況については、はなはだお寒いとしか言いようがありません。
 日本金融研究所理事長の八代尚宏氏の『人事部はもういらない』や ソフト化経済研究所所長の日下公人氏の『人事破壊』でも、人事部が日本をダメにしていることは 明らかです。
 私の経験でも、まったくそのとおりです。


 やってはいけないことばかり、今の人事部はやっています。経営陣が期待することを悉(ことごと)く 裏切っています。ダメな社員を採用し、能力の高い人材を腐らせ、組織をガタガタにしています。


 そもそも人事部に求められる職務は「採用」と「教育」、そして「配置」です。それに付随する「評価」もありますが、 基本はこの前の3点でしょう。評価はだんだんと現場主義になっていますから。
 これらに成功している少ない企業が勝ち組になり、失敗している会社は負け組です。


 私は昔、ある大手の鉄鋼会社の新人事システムを構築するチームに選ばれたことがあります。元気いっぱいの課員たちが、担当重役やわたしたち学者陣に向かって、あれこれわが社の将来像を 語りあったり、時には現実に引き戻されたりしつつも、楽しく人事制度を策定していきました。


 あのころは実にやりがいのある時期でした。こんなに人件費・土地代・諸物価が高い日本国内で、 鉄などという素材産業が成り立つのかといった、基本問題まで討議しました。まだ夢がありました。高度経済成長はやや鈍化しつつありましたが、日本そして人事部にも、将来を語る元気があったのです。


 いまの日本企業には、一番に夢がない。二番に気力がない。三番に独創力をもつ人材を育てる 度量がない。 そうしてしまった元凶は、よくマスコミに叩かれるけれど実は経営陣だけではないと思っています。むしろ、そうさせた実行役は人事部だったでしょう。
 経営陣が決定した戦略を実現化し、遂行させるために最大の資源である人材を適正配置しなくては ならないのに、悉く裏切り、我が社の財を不良債権化しました。


 まず採用です。元気で意欲的、適応力が高くて自立している人材を見抜けなくなったのです。 リクルートという語は、もともと「新兵さんの補充計画」のことですが、 こうした名前の会社がもつ心理検査が国内でへんに大はやりしました。その「傾向と対策」本まで出ました。そうなっては採用試験は全く意味がありません。
 答が売られているのですから。


 しかも、そのR社の心理検査はナンセンスで、笑い話のような内容です。
 たとえば「あなたは人気者ですか」という問いに「はい」と応えると、社交性が1点増すという検査方法は幼稚すぎなのです。ですから、ちょっとした人が「こうすればラクラク合格」なんて本を出してしまい、みんなで同じ就職用 スーツを着て、同じ攻略本を読んで返事の練習をし、同じ顔でオフィス街をうろうろし始めました。


 人事部がすべきことの中心は「教育」と「配置」ですが、これらはちょっとずつ説明していきます。一気にすべて書くのでなく、だんだんと紹介していきます。なにしろ人事部はダラシナイことの元凶、本家・宗家ですから。


 では、貴社の人事部が良いのか悪いのか、「採用」面だけで点数をつけてあげましょう。

1 R社などの在来型心理テストを使っている。
2 自前でテストを作るときは本屋で何か探している。
(数学や英語、国語、小論文でお茶を濁している)
点数が取れる人が優秀だとまだ信じている素直さというか世間知らずですね。
3 経済紙とか雑誌で、得意気にわが社の採用方針をしゃべりたがる。
(人材の採用方針は経営戦略なのに、それを暴露してどーする!?)
4 わが社の人材はなぜこのタイプが必要なのか60分で説明できない。
5 面接を重視する。
(時には女子学生に「初体験は」とかの質問でセクハラを喜ぶバカも)
6 学校名を書き込む欄がないと評価できない。
(人事の人間は書店が好きで自信のなさを何かでカバーする。学歴が好き)
7 10年前の採用者の入社試験の結果と昨年の業績との比較をしない。
(入社後の新卒者がその後、どう評価されているか追跡しない)
8 この5年間で採用システムを修正・変更していない。
(『山一事件』のあとあんなに社員の意識が激変したのに!)
9 大学と普通高校のカリキュラムの問題点を120分で説明できない


 これらのうち4つ該当する人事部だったら解散すべきです。そして社内の各部で独自に必要な人材を 採用・教育しましょう。そうすると人事部が犯す問題は大きく3つ(あっ、全部じゃん!)ありますが、「採用」「教育」「配置」 という根本トラブルだけはしなくなります。当たり前か。そしたら人事部はやっぱり不要だわ。


 コーポレート企業でのカンパニー制度にするのです。問題が身近になり、わが社に必要な社員とは という大仰な問題でなく、自分たちの仕事に必要な人材とは、と考えが突き詰められてきます。


 つまり頭デッカチな人事部は、企業の求める人材ニーズでなくて、何とな〜く「いい人」を採用している ことが失敗なのです。要領のいい学生は即このカラクリを見抜きます。で、いつの間にか社内は抜け目のない、返事の仕方のうまい、 しかし稼げない、もっというとズルがしこい若者に占領され、エイリアン企業になっているのです。
 お得意様も、これではいつか引きますよね。苦しい経営は人事から、ではシャレになりません。


 人事部が欲しがる人材の典型を教えます。それは、社交性があって客観的に考えることができ、忍耐強くて、自己表現力があって細心な気持ちもあり・・・といった、とうてい考えられない理想の人物像です。中国の伝説の動物、四不象(*)のように架空のモデルを作り上げるのです。


 カラスが美しい鳥の羽根をアレコレとまとったけどバレて笑われた寓話を思い出させます。
 いま述べたパーソナリティは、実は心理学ではすべて独立した項目で、ふつうは重複して所有しない 割合がたかく、それだからこそ、評価項目として作られているのです。それらを専門語に置き換えると、 社交性が外向性のことです。
 以後は、内向性、几帳面さ、積極性、慎重さとなります。それぞれ個別な性格特性を意味します。


 ね、こんなアホなことを一年間、人事部はアーでもないコーでもないとなさってます。


 会社に利益を生まない部署の仕事まんまでしょ。


 こんな風に書くと、日本企業はもうダメなようですが、大丈夫、改善策はあります。
 まず人事部の意識改革です。意識の改革のためには行動の切り替えです。人事部の行動とは、 繰り返しますが「採用」「教育」「配置」です。このうち第一歩である「採用」から変えましょう。


 それで企業は生まれ変わります。ホント。
 例えば実例をあげると、東京近郊にある(名前は伏せます。企業は戦っていますから)電機メーカーは、採用試験がデッサンです。無色透明な裸電球をスケッチさせます。
 陰影のない物体をいかに立体的に描き、カーブのラインを上手に出せるか応募者は苦労します。


 音をあげてあきらめ席を立って帰る学生もいます。


 でも、その工夫の仕方こそが同社の注目点なのです。
 これからも続く熾烈なライバルとの戦い、移ろいやすい消費者の求め。そうした描きにくくて掴みにくい対象にどれだけチャレンジできるか、その姿勢をみています。


 あなたの会社でも部門ごと、職務内容ごと、むろん職階ごとに求められる職務知識と技術は異なる はずです。学歴でなく最終判定者である「お客様」をいかに納得させられるかを考える能力は別々なのです。それを「わが社」なりに調べていくようにしてみませんか。応援しますよ。


参考図書
「人事部はもういらない」 八代尚宏著(講談社)
「人事破壊」 日下公人著(PHP)


脚注
*四不象=中国の伝説の動物。ウシ、トラ、シカ、ウマの各要素をもつといわれる
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