日本企業では、上司が部下を正しく評価できていない。例えば、次のような数値は大手企業での平均的な勤務評定の一致度だ。上司からの評価が低く、社内の全体傾向(仲間たちの評価の仕方にあわせた)による判別分析でも同じく低いのは71.2%、上司からの評価が普通、判別分析でも普通になる部下の割合が83.3%、上司も計算も高い評価になる部下は70.9%である。 しかし、評価がズレることも多い。直接の上司からの評価が低くて、みんなの評価法に従うと、もっと高くなる部下(A群)は29パーセントもいる。他の上司たちの評価のしかたなら「普通」が23.3%もいて、逆に「高い」評価になる部下は5.5%いることになる。 判別分析での分類 低い 普通 高い 上司からの評価が低い 71.2 23.3 5.5 100 上司からの評価が普通 10.1 83.3 6.5 100 上司からの評価が高い 10.9 18.2 70.9 100 直接の上司からの評価が高くて、周囲の評価法だと下がってしまう部下(B群)も29パーセントいる。判別分析で計算すると「普通」が18.2%いて、「低い」評価が10.9%もいる。いずれにしろ、30パーセント近くの部下が、上司から正しく業績を評価されていない。 そして、残酷だなあとつくづく思ってしまうのは、不当に低くされている人がいることだ。人間だからミスはするが、ミスにも2種類がある。第一種のミスは、低い業績の人を実際より高くしてしまう過誤で、B群がそれに該当する。甘い評価をしてくれてトクしたグループである。 残酷というか、あってはならないものがA群といえる。本来なら優秀な業績をあげたことを正しく評価され、賞賛されるべき部下が、上司のトロイ眼のために見逃され、「不当に低く」判定されてしまった人たちだ。 法律でたとえると、罪もない人が犯人とデッチアゲられ、つらい獄中につながれることだ。B群は真犯人を警察が捕まえきれずに逃亡させていることになり、甘い対応が誰かをトクさせているが、A群はまさしく不当な扱いをされている。これでは部下はクサッてしまう。そして組織はしだいに衰退していく。 一生懸命に仕事をして、業績をあげてきたのに、無視されるどころか反対にヒドイ評価をもらっている。こんな最悪な人事評価が世の中、まかりとおっている。それは、人事部の人々が計数に弱すぎることが最大の原因だ。 鉛筆の芯をなめなめして、彼はこの程度かなあ、彼女はあのくらいにしとこうとか、業績をまったく無視している。いえいえ、たしかに評価そのものは上司がしていますよ。しかし、ちょっと統計学をいじれば、そうした上司たちのデタラメはすぐにバレてしまうのに。 「○○さんの上司さ〜ん。あなたの部下への評価方法は間違えてますよ。今後はみんなと揃えてください」と。こういえば、あちこちのフシアナ眼の上司はたちどころに消え、組織はもっと元気になれるのになあ、シッカリしろ。 多変量解析はこのように、正しい人の味方(ジャーン!!)であり、悪代官のようなフシアナ上司を、水戸黄門様さながら懲らしめてくれる。人事部のみなさん、もうそろそろ、キチンと社員を評価してあげましょうよ。でないと、迫りくる人材難の時代に、カスみたいな人材しか残らないよ。それには、きっちり数字を統計解析できるようになることだね。 アッ、それからもっと大事なことは、これにはテキストマイニングが使われている。ただし、○○総研とかのデタラメなものでなく、社員が書いた文章を理路整然、きちんと分析できる方法だ。形態素とやらのイイカゲンなテキストマイニングでは、「仕事」と「ある」や「社員」「働く」とかしか出てこない。残念だが、そんなレベルだと、この判別分析や因子分析といった計算は出来ない。 世間はコンピテンシーだ、業績給だ、いや日本的人事に戻すべきだと、騒がしい。しかし、まず部下の業績をきちんとブレがなく評価できるようにすることが先決だ。ヨコ文字を叫びながら、実際は子供だましのレベルの会社はホントに多い。テキストマイニングとかいってて、やってることは積み木の文字揃えのような○○総研、コンピテンシーといいながら、実際は部下いじめのメーカー(掃いて捨てるほど多数)・・・。
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