欠陥品が企業のイメージに突然、大きな打撃を与える。せっかく回復基調にあったメーカーが、ちょっとした構造ミスがあることによって、お詫びと欠陥品回収の広告に時間とコストをかけることになると、経営的にはものすごい痛手だ。

そのメーカーは、形態素をもちいたオモチャのようなテキストマイニングを他社から購入していた。しかも部門別にしろと複数ライセンスを。それなのに顧客や修理業者、販売店からあがってきていたクレームを見逃した。数年にわたって出ていた危険な兆候を、まんまと見過ごしていた。それは形態素式のテキストマイニングがもつ、能力の限界が露呈したせいだ。

弊社は膨大な量の顧客意見を分析し、依頼してきた企業に「お客様の声」として返却している。そうした処理のなかで、時々、これは大変だ、命にかかわる重大な情報があると察知したときは、その旨を緊急に相手に伝えている。ところが証券会社系やワープロ屋系とかの玩具レベルのテキストマイニングを導入してしまった他の会社は、それで顧客の意見を吸い上げられていると錯覚している。

私たちが、どうやって大事な生活情報を拾い出せ、企業のブランド価値を守れているのか説明しよう。

あるテーマパーク会社は、１万人にものぼる大量の意見を毎年分析している。そのほとんどは「待ち時間が長い」「キャラクターにあえて嬉しかった」「夢のような体験だった」という意見で占められ、しかも毎年、だいたい類似している。しかし、質の高いサービスを提供する同社は、ちょっとした希少意見でも見逃さず、きちんと改善に配慮するようにできている。それは弊社の提供した人工知能によるテキストマイニングがあったからだ。

ほんのわずかな意見の中からも、近いうちに問題化しそうな発言や、人命にかかわるような重大なコメントはイッパツで発見できるようにした。料理の味についての意見、売れ筋商品の欠品、トイレの床がぬれていたなどという発言は年間に数えるほどしかカウントにならない。しかし、それが大問題なのだ。ニューヨークの治安問題で有名になった「割れ窓理論」のように、些細なことを見逃すと、それが次々と尾を引いていき、しまいに組織をゆるがすような大事件になることもあるからだ。危険な兆候は、まだ量的に少なくとも、早期に解決する。「まだ」は「もう」だから。いつなんどきわが社を危うくするクレームを事前に把握したい。

そうした事前に重大な兆候をサーチする仕組みは、じつは統計学によって可能になった。

テキストマイニングでも旧式の「係り受け」方式は、単語のカウントしかできないために少数の発言は埋没してしまう。大量の発言は、毎年おなじように出てくる言葉ばかりで、社員たちはもう馴れている。馴れはコワイ。いつも見なれている問題の事実を根本解決しないで、毎日、毎月つづけている。今日も同じ報告書を経営陣に提出して、社内はコト足りたつもりでいる。いつか発覚する欠陥やゴマカシ。これはコワイ都市伝説の一話だ。

自動車会社も電器メーカーも、住宅メーカーも、どうしてそんな欠陥テキストマイニングを使って安心していられるのだろう。M自動車のように社会問題を引き起こし、信用失墜させ、経営的に苦境におちる次の候補はアソコの会社だ。私たちには見えている。マンション、医療、薬品、運輸などが今、ボロ隠しにやっきとなっている。

そんなデタラメなテキストマイニング・ソフトを買っちゃった企業から、よく「どうしたらいいでしょう」と相談がくる。残念ですナ、としかいいようがないが、それではあまりに可愛そうだ。まず購買先に、何とかならないか聞きなさいというが、その大手テキストマイニング・ソフト屋さんは顧客からのクレームがまったく理解できないらしい。相変わらず子供だましのようなソフトを、たっぷりで大掛かりな宣伝で今も売りつけている。

でも、お客の声を聞いているフリだけで安心しますか、あなたと自分の勤務先は。