2005年を象徴する社会現象の一つは「小泉総選挙」だろう。マスコミなどの事前の予想に反し、自民党は思いも寄らない300議席に近い大勝利となった。さすがに投票日が近くなって、マスコミは各地からあがる記者のカンもあって与党の勝利は感づいていたが、1カ月前までは朝日新聞やTBSといった野党びいきをするところは、自民敗北を予想して喜び浮かれ、はしゃいでいた。 民主党は政権奪取を叫び、選挙スローガンには勇ましい公約が列挙されていた。それらは後に知ることとなったが、どこかの広告代理店が世論を分析したとかいうテキストマイニングが反映されていたそうな。 いかにも実直な人柄をにじませる、当時の民主党党首・岡田さんが白い椅子に腰掛けて、いろいろな世論のとりわけ不満部分を噴出させていた。「郵政民営化」だけでない。年金、外交、少子化対策、景気回復、道路公団、地方分権・・・。今もそうだが、我々を取り巻く社会環境はじつに複雑だねえ。 岡田民主党は、それら多数のガチャガチャうっ積している不満や矛盾を、そのままゴチャゴチャと国民に見せようとした。「どうだ、社会問題は難しくてテンコ盛りだぞ〜」とばかりに。しかし、結果はすでに誰もが知っているように、民主党は大敗した。 広告代理店がもちいたテキストマイニングは、たわいない幼児レベルの技術だったことが民主党の不幸の始まりだった。発言をかき集めてきて、社会問題の多さをただカウントする方法では、国民の複雑かつ言いたいことがたっぷりの世論は、ホンネ部分の解明ができないことに気付いていない。 社会の底辺にいる人々の意見の解釈はもともと難しい。ほかにも各組織や地域特有の問題点もある。それらを単に列挙したからといって、問題は解決しない。ソリューションには着手の順番があり、それらをどのように上手に片付けていくのか。そのプロセス(目的地までのロードマップ提示)こそが政治だろうが。 まずは国民を最大多数の幸福に導く、第一歩が何かを判断し、それを可能にする対策は何か。それを妨害し邪魔する要因は何か、それらを峻別して解決策はスタートする。民主党はそれをしないで、世論の複雑さをそのままさらけ出しただけだった。 ど真ん中の問題を真っ先に解決する。これが政治の基本だ。ガチャガチャといろんな絡み合った問題をいっぱい見せ付けたからといって何の解決にもならない。広告代理店のテキストマイニングは、いろんなテーマをゾロゾロ、バラバラ、ただかき集めるだけの未熟なものだったことが全ての敗因だった。 形態素を使うのはまだ許せるが、とりわけ恥ずかしいのが係り受けという粗悪技術だろう。そうしたコトバの羅列をかき集めるテキストマイニングは、このように役立たずなものなんだ。あのときに教えてあげようかと、ちょっと思ったけど、ど〜せ、広告代理店さんに理解できるナレッジ技術じゃないなとやめた。 しかし、選挙のプロとか自称する宮川なんとか氏、東海大学の白鳥なんとかキョージュたちは、恥をかいたねえ。自民党が200議席を割り込み、180議席だ、いや160だと騒いだっけ。民主党も喜んで240議席とれるとか鼻息が荒かった。当時の総選挙の予想をしたオモロイ連中は、いま何しているのだろう。 白鳥キョージュったら、株屋がよくつかう単回帰という算数レベルで地域の政党別得票率をはじきだそうとしていた。すんげー怖い、一発勝負なワザ師だと恐れ入ったね。あんなんで大学教授でいられるんだ。市場調査も世論分析もできない知識水準で。
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