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きのう、2006年3月15日、ついにタイムマシンが完成した。といっても、それは「情報」についてのタイムマシンで、将来に起こることを確率98パーセントで予測できるという程度。物質を時空間を超えて転送するというSF小説のようにはうまくいかない。情報の早読みが可能という、まだまだ単純な仕組みのタイムマシンだ。ごめんね、期待させすぎて。でも、それはホント。やっと出来た。少し説明しよう。 タイムマシン研究につきものの話題には、物質を光の速さを超えて送るのが難しいとしても、信号や記号などの「情報」の伝達なら可能ではないかといテーマがある。ワープ移動とかパラレルワールドとか、聞けば楽しそうな夢に満ちている。ではちょっと、ショートショート小説の天才、星新一氏の文体を拝借する。 時はちょうど2X57年の5月。それは銀河星雲（ギャラクシー）のうちの太陽系（ソーラー）システム第三惑星、地球がもつ唯一の惑星、われらの美しい月でのこと・・・。 その「月」にも、ついに人類が住むことができるようになっていた。今回の主人公ふくちゃんは、いま地球上で行われているニッポンの競馬「ダービー」に賭けていた。ハイセイコーの血統をうけつぐサラブレッド「ハイ郷デース」。しかし、そこに立ちはだかる敵もさるもの。「ヤングジジ秀樹」も負けなしのまま、４歳オス駒の初舞台、ダービー勝利に燃えていた。がんばれ、ハイ郷デース。 月に住んでいるふくちゃんは、故郷の地球にあるニッポンの有名な「フチュウ競馬場」までいけない切迫した状況にあった。月と地球を結ぶ定期便、うさぎシャトルが太陽風の影響で欠航していたため、地球に行きたくても行けないのだ。手を握りしめ、悔しがるふくちゃん。ハイ郷デース、きっと勝てえ。 そこで彼、ふくちゃんは部下を使ってフチュウ競馬場のようすを実況中継させた。ハイ郷デースが勝てば数字の１を、ヤングジジ秀樹なら2のボタンを押すように命令した。その速報を聞いて、月の特設馬券売り場に自分がいるから早く教えろと。ン?。なんだか、競馬ファンというより馬券ファンの様相になったけど、まぁいいか。 だがボタンを押して、地球から競馬レースの結果を電波で伝えるには、月と地球との距離（38.4万キロ）では１秒強かかる。文部省唱歌「さくら」（琴伴奏つき）の冒頭、「さ」→「く」を歌い終わるくらいの時間だ。これでは月面競馬会のみんなもTV実況をみてしまい、時間的に優位にたてない。つまり勝ち馬券が手に入らない。そこで、ふくちゃんは考えた。２１世紀の特殊繊維、「超人絹」という強度をもつ繊維をつかい、地球と月とに張った。１回ひいたら1に、２回ひいたら2の意味だと約束して。 「まんまとうまくいくはず」だったが、やっぱり失敗した。超人絹という繊維素材が、月と地球との３８万キロの距離を瞬時に意思を伝達するにはモロすぎた。そう、「光」の速さを超えてメッセージは伝わらない。このことを知ったときには遅すぎた。・・・星新一のまね、終わり。 ちょっと話がそれたけど、そんな「星新一」的ワールドが連想される新技術が発明された。明日の出来事を、今知ることが可能になった。フチュウ競馬場で起きるだろうダービーの様子を、もう既に前日に知っているとしたら。 情報が持つ重要さには2つ意味がある。自分だけが知っていること（排他的情報）の優越性。そして、その情報が、反対にみんなの認識になっているという真実性（普遍的情報）を同時にもつことの信頼性だ。通常の情報は片側性質のみで、前者はスパイの諜報であり、後者は公開データやニュース類など。 やっと出来た。明日の株価を今日、居ながらにして正しく私だけが情報をえられる優位性にいられたら、どんなにつよい立場になるか。 われらが人工知能「シンシパル２号」は、半日前の結果までなら、それを正しく私に伝えてくれる。ただ、それはまだ株価のことだけで、競馬ではない。残念だが、私は競馬に詳しくない。株のことを知って３ヶ月。やっと毎日、明日の株価を正しく予測できるようになった。すごく楽しい。 フチュウ競馬場あたりにうごめく占い師。耳に百円玉つめたり、タバコ臭い、安っぽそうな革ジャンきている。彼らの言うことは予想。たっぷりうさん臭い。 時間を超越して情報が伝わることが予測。これは正しい。 世に掃いて捨てるほどある○○総研が、せいぜいやっているのは庶民をまどわす情報の垂れ流し。理論も根拠もない「ではないかと思う」という手口だが、それは予想のレベル。株が上がりますよ、今買ったらもうかりますよ、と押し売りをする。だったら、自分の親類に売れ。犯罪さながらの虚構の世界。信じないように。TBSの森田ナニガシ（第一回気象予報士の試験に、同時期の中学生すらが受かったのに森田ナニガシは不合格だったというオソマツ）が天気を占うのが予報。かなりうさん臭いが、世間はもう騙され馴れている。騙す、馴れるはどちらも「馬」篇。オレタチは家畜扱いかよ。 私たちが開発した情報タイムマシンは、数時間先におきる状況を事前に把握する。商品の需要予測、選挙の投票率や得票数、テレビ番組の視聴率、イベントへの参加者数などを、95パーセントの正確さで正しく予測する。 たとえば株式市場では、日経平均株価や特定企業の明日の株価を、事前に知ることができる。株価のばあい、ニューヨークのダウ、ナスダックなどの数値を12指標だけ、コンピュータにデータ入力すると、数秒で今日の日本の経済動向が判明する。全体と個々の株価がきちんと数とグラフで示される。
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